おわりに

「人間万事、塞翁が馬？失敗体験記」、全３５話

最後までお読みいただき、ありがとうございます！

この体験記では、私が３０００万の貯金を失ってしまうまでの

その経緯、その時々の心理状態から

そんな自分と向き合えるようになるまでを

当時を思い出しながら３５話にまとめてみました。


格差社会、雇用不安、年金不安が叫ばれる現在社会

不安を抱える人々をターゲットにした

高額報酬を謳う、ネットワークビジネスや代理店ビジネス

高配当を謳う、投資詐欺

人生の成功、夢の実現などを謳う、成功哲学セミナー

これらが雨後の筍のごとく現れ、その被害が後を絶ちません。

私の失敗体験記が微力ながらでも警鐘になれば

また被害に会われた方の立ち直るキッカケになれば

私としては、これほど嬉しいことはありません。


その後、私は結局、成功したのか？と言われれば

まだまだ道は遠く険しいというのが正直なところです。

ただ、今回の一連の出来事を振り返りますと

３０００万の貯金が災難を呼び、貯金を失ったおかげで天命を得た

そう考えると”まさに人間万事塞翁が馬”と言えるのではないでしょうか。

私の人生、この先どんな物語が待っているのか？

少しワクワクしている今日この頃です！



２００９年１０月31日

ナックメディカル　　代表　中川栄治

四十にして惑わず

”座して死を待つくらいなら”


こう考えた私は残り３０万でホームページを作ることにしました。


するとどうでしょう！

注文は殺到し、私は瞬く間に成功者に！


などということは決して起こりませんでしたが

東京、山形、新潟、静岡、愛知、兵庫、大分など

今まででは考えられない場所からの注文は私を感動させました。


私は初めて注文の入った日のことを思い浮かべました。

どれほど嬉しく、ありがたかったことか・・・


「俺はこういった感動を忘れていたな・・・

　今回の一連の出来事は、これを気付かせる為の

　神の試練だったのかもしれん・・・」


「ついつい自分と他人を比べて

　自分の不足しているところばかりに目が行ってしまう

　だから人の情報に振り回されて、こういうことになったんだろう

　もっと今持っているものに感謝せんといかんな・・・」


「ずいぶんと高い授業料を払うハメになったが

　これに気付いただけでも良しとするか！」


「四十にして惑わずだ！」


私は、この時

晴れ渡る空のような爽快感の中にいました・・・




　

天命を知る

”天命とは天が一番叩くもの”

”嘆きながらもやり続けているものこそが天命である”

”おこがましい＝天命の領域”


「嘆きに関しちゃ俺は誰にも負けんぞ！？」


こう思いながら過去の嘆かわしい出来事を振り返りもした。


ネットワークビジネス、投資詐欺、成功哲学セミナー、介護用具の代理店・・・


「確かに俺も酷い目に会ったが

　数多くの破綻した人を見てきたな・・・」


「投資詐欺に関しちゃ自業自得と言われればそれまでだが

　他に関しちゃ皆、自分の人生と将来を真剣に考えて

　参加を決心した人ばかりだったよな・・・」


体の中から、沸々と怒りが込み上げてきました。


「畜生！あんな人達を食い物にしやがって！」

「俺たち凡人に勝てるパターンなんて無いのか！？」


この時、私の頭に”おこがましい”考えが閃きました。


「金も力も才能もない凡人が唯一勝てるパターン、それは

　”自分の感動体験を伝えることでビジネスを成立させる”

　”自分自身を最高の見世物にして自分自身をブランド化する”

　これしか無いんじゃねえか！？」


「俺が、このシャンプーでそれを実証してみせる！」


「そして、この考えを啓蒙してやる！」


「成功するからやるとか

　失敗するからやらないとかじゃねえ！

　天命に志したからやるんだ！」


自分の欲以外で熱くなったのは

生まれて初めてのことでした・・・

天命

”今の俺に出来ることはシャンプーの販売しかない”


私は早速行動の移りました。


「まずは販路の拡大だ！」


美容室、理容店に資料を送付

しかし全く反応はありませんでした。


「介護用具の時と同じパターンか？・・・

　それじゃ資料を配りに行っても嫌がられるだけか？・・・」


試しに資料配りをやってみたら案の定

どこでも嫌な顔をされました。


「金と労力を使って人に嫌われたんでは話にならんな・・・

　ターゲットを変えてみるか・・・」


今度は一般家庭にポスティング

８００件配るも反応無し

あっと言う間に１０万円が消えました。


「結局こっちからアプローチを掛けると嫌われるのか・・・

　確かに今のお得意さんは全部紹介だったもんな～・・・」


「タウンページに載せてみるか！」


早速電話し担当者に会うことにしました。

実際、話を聞いてみると地元北九州に名刺サイズで載せるだけで

結構な金額を提示されました。

考え込む私に担当者は言いました。


「サイズを半分にしてインターネットも利用してはいかかです？

　インターネットなら全国区ですよ！」


他に選択肢の無い私は月々２万円払いの１年契約をしました。

しかし、ここでも反応は全く無し


ついには私の貯金も残り３０万となりました。


「やっぱり俺はもうダメなのか・・・」


打つ手もなく図書館に逃げ込む日々

そんなある日、本の中の一文に目が止まりました。


”天命とは、天が一番叩くもの”


「いや・・・もう十分に叩かれてると思うんだが・・・」


私の目はその一文に釘付けになっていました・・・

自分に出来る事

その後、何十冊と成功哲学本を読んで出た結論は


”今出来ることだけ考え、それを実行する”


答えは、これしかないというものでした。


「これだけのことを聞かせるだけで金なんか取りやがって・・・」


以前、連れて行かれた成功哲学セミナーの光景が頭に浮かびました。


「しかし、今の俺に出来ることね～・・・

　貯金は、ほとんど無くしたし・・・これじゃ商売は無理だな・・・」


そんな思案が続く日々


そんなある日、携帯にメールが入りました。


”今振り込みました。今回は５本よろしく！”

シャンプーのお得意さん、美容院からのメール


”至急手配します”の返信を打ちながら、ふと考えました。


「シャンプーだけは毎月どこかの店が注文くれるよな・・・

　明日、挨拶回りしてみるか・・・」


翌日、お得意さんの理容店、美容室、エステサロンを回りました。


「シャンプーでお世話になってます中川ですけど～

　お客さんの反応はいかがなのもでしょうか？」


これに対し


「どうしても個人差はあるけどね、評判は良いよ」

「うちのお客さんには全員効果あったよ」

「俺には効果無かったけど、お客さんには効果が出てね～」

「お客さんに効果が出たもんだから

　そのお客さんの友達が買いに来たよ」


なかなかの好評！


ネットワークビジネスに介護用具の代理店と

先方に嫌がられることばかりだった私は感動しました。


「今の俺に出来ることって

　ひょっとして・・・シャンプー？・・・」


この時、私は一本の蜘蛛の糸の心境でした・・・

希望

図書館通いの日々


この頃、私は素直に自分と向き合えるようになっていました。


”今の自分の在り方にふさわしいものが引き寄せられる”


「確かに・・・騙した人間の問題というより

　そんな人間を引き寄せてしまう自分に問題ありだよな・・・」


”逆境は最大のチャンスである”


”逆境は次のステージに進むための神の試練”


「本当かよ？・・・逆境がね～・・・」


私は、ふと若き日の自分を思い出していました。


人に使われるのが我慢できずに独立した２８の頃

”独立などするんじゃなかった”と布団の中で泣いた日々

２店舗を潰し独立を断念、また勤めに出た日々

やはり人に使われるのに我慢できず大喧嘩して辞めた日

雇ってくれる所もなくバイトしていた日々


「まさか、あの後スーパーのテナントに入れて

　ましてや３０００万の貯金が出来るようになるとは

　あの頃、考えもしなかったよな・・・」


「じゃあ、今回この金を失ってしまったことで

　次のステージが俺に用意されているのか？・・・」


私はこの日より

少し前向きに物事を考えるようになりました・・・




　

構造改革

図書館で成功哲学本を読みあさる毎日が始まりました。


内容のほとんどはネットワークビジネスで聞き飽きたものばかり


しかし、たまに私の心を捉えるフレーズもありました。


”上手くいかない原因は

　自分が悪いのでも人が悪いのでもなく

　構造が悪いのである”


「う～ん・・・構造ね～・・・」


私は貯金を失うまでの経緯を思い返しました。


「投資詐欺は論外にしても・・・

　ネットワークビジネスと介護用具の代理店

　これは損が太かったな～」


「二つとも代理店の仕事か・・・

　そもそも、なんで代理店なんて募集するんだ？・・・」


「直接ドンドン売れる物なら代理店なんかいらねえじゃねえか！」


「売りにくいから代理店を募集する

　最も過酷で難しい新規開拓を押し付けられる

　しかも加盟金まで取られ経費自己負担で動けば

　そりゃあ金は無くなるよな・・・」


呆気なく答えが出ました。


「”時流に乗った利権の話”　”無から有へ”　”まだ水面下の話”

　”仕掛けられる側から仕掛ける側へ”・・・・

　こんなフレーズで俺はドップリ仕掛けられる側に嵌ってたのか・・・」


「人から話が来た時点で、すでに仕掛けられる側だよな・・・」


「これが５年の時間と３０００万の授業料を払って得た真理か・・・」


この時私は不思議と落ち込んでいませんでした。


何か開放された、いい気分でした・・・

　

図書館通い

図書館に入り浸る日々


インターネットカフェで漫画の世界に逃げ込みたくても

インターネットカフェの料金が痛いと感じるほど惨めな状況


「かつて３０００万あった貯金が今じゃ１００万無いのか・・・」


メーカー破産後の展開も惨めなものでした。

自動排泄物処理装置の事業は他の企業に引き継がれ

代理店に対して説明会が開かれました。


”役員連中は倒産の間際に機械の横流しをしてたらしい”

”マザーズに公開予定があると言って株を買わされた人もいる”


こんな情報が耳に入るたび、かつて経験した惨めさが蘇りました。


「ネットワークビジネスでも全く同じパターンだったな・・・

　俺って奴は本当に学習能力が無いんだな・・・」


新しく事業を引き継ぐ会社は

代理店加盟金３００万円を提示


「救済措置など無いのか・・・」


私は、その場で説明会場から出ました。


「これから俺はどうしたらいいんだ・・・」


図書館で暇を持て余す毎日

ついつい成功哲学系の本に目が行ってしまいます。

”夢、成功イメージ、目標を明確に、プラス発想、与える側の人になる”

どれもネットワークビジネスで、さんざん聞かされたものばかり

ウンザリしていたその時、次の一文が目に止まりました。


”金を追いかけると金は逃げていく”


「これって俺そのままじゃねえか！」


この日より私は自分と向き合うことを始めました・・・

ショック再来

ボランティア活動の日々が続きました。


”活動費はシャンプーで稼ぐ”と意気込んでみたものの

甘いものではありませんでした。


シャンプーの買い替えサイクルは半年

ガソリン代も出ない月も多々ありました。


そんな中、久しぶりにメーカーの事務所に寄ることにしました。


「少しは進展しているのか？・・・」


メーカー役員はニコニコしながら私に資料を差し出しました。


日経新聞のコピー、その中の記事に私は衝撃が走りました。


”来年４月より新たに介護用具に認定”

”自動排泄物処理装置”


「ついに来たか！」

「やはりこれは本物だったんだ！」


私は興奮に体が震えました。


「今まで代理店さんには、ご苦労お掛けしましたが

　来年からは凄いことになりますよ！」


役員の言葉に私は天にも昇る気持ちでした。


「今まで使った金と努力が報われる日が来たんだ・・・」


私は早速、このコピーを慰問先全てに配りました。

相変わらず反応はありませんでしたが

「来年、正式に厚生省の発表があれば状況は一変するぞ！」

私に悲壮感はありませんでした。


年が明け３月


「いよいよ来月からか・・・

　それにしてもメーカーは研修とかやらないのかな？・・・」


そんなことを考えていたある日、一通の手紙が届きました。


「弁護士事務所？・・・なんじゃそりゃ？・・・」


開封と同時に私の頭の中は真っ白になりました。


そこに書かれていたのは


債務超過によるメーカーの破産、解散の通知でした。


「またか・・・」


以前、これに似たショックが記憶に蘇りました。

ネットワークビジネスの時、東京で味わったショック

今まで費やした時間、金、情熱が一瞬で無に帰す瞬間

夢が砕け散る瞬間


「俺は・・・もうダメかもしれない・・・」


私は絶望の中にいました・・・

日銭

月の半分は慰問コンサートのスケジュールが入りました。


慰問先、全てに資料を配りましたが反応はなし

日々のガソリン代がジリジリと貯金を減らしていきました。


「厚生省の認可が下りる前に、これでは貯金が底をつくぞ・・・

　何か他に収入の道をさがさないとボランティアも続けられない！」


私は日銭の稼げる手段を探すことにしました。


そんなある日、知人から”耳ロウソク”をやってみないかとの電話

早速、研修を受けに行きました。


耳ロウソクとは筒状のロウソクを使って

耳垢や耳の中の老廃物を吸い出すというものでした。


「これは珍しい・・・エステサロンに営業してみるか・・・」


私はエステサロンに売り上げの３割を場所代に払うことを条件で

呼んでもらえるよう”出張します”の提案を持っていきました。


当初は物珍しさから声が掛かりましたが、すぐに全く呼ばれなくなり

研修費用５万とロウソクの仕入れ１０万の元も取れずに終わりました。


ただ、思わぬ副産物もありました。


当時シャンプーを変えたことで育毛効果が出た私は

たまたま、その経過を写メで記録していました。


そこで資料を作りエステサロンに見せたところ


「アンタ、耳ロウソクより、こっちの方がよっぽど凄くない！？」


７掛～５掛卸の条件で取り扱ってくれることになりました。

その後、紹介もあり美容室、理容店などでも

取り扱ってもらえるようになりました。


「なんとか他に収入源を確保した

　これでボランティア活動は続けられるぞ・・・

　厚生省の認可が下りる前に破綻せずに済む！」


私は再び介護業界に人脈を築くことに

野望を燃やすことになりました。


まさか、このシャンプーが本業になるとは


この時夢にも思わずに・・